結婚指輪の選び方 なぜ、指輪は変形してしまうのか?
先日、結婚指輪の耐久性について記事を書きました。
IZURUでは9割のお客様がプラチナの結婚指輪を選んでいます。
だから、プラチナの結婚指輪が【歪む、曲がる、変形する】について、もう少し深掘りします。
後半にあまり知られていないことを書きました。
差し支えなければ、最後までお読みください。
目次
1 細すぎる、薄すぎる。ペラペラの結婚指輪は変形しやすい。
2 ルテニウムや銅を混ぜることによって、プラチナは硬くなる。
補足 金属が硬すぎると、製作時にトラブルが起きやすくなる。
補足 K18 ゴールドの耐久性について。
3 鍛造と鋳造、工法の違いによって結婚指輪の強度が決まる。
盲点1 サイズが合っていないと、指輪が歪むことがある。
盲点2 棒を強く握ると、指輪が歪むことがある。
私の母親はすごく薄い、ペラペラの指輪を愛用しています。
1 細すぎる、薄すぎる。ペラペラの結婚指輪は変形しやすい。
現在、ほとんどの結婚指輪はプラチナ・Pt950で作られます。
高価な金属です。
細く・薄く設計すれば、コストを抑えることができます。
プロの目から見ると、「これで大丈夫か?」と不安になるような結婚指輪も多いです。
意外に思うかもしれませんが、プラチナは硬い金属ではありません。
どちらかというと、柔軟性があり、粘りがある金属と認識しています。
だから、プラチナはジュエリーを作るのに適している。
そして、細すぎる・薄すぎる結婚指輪は避けた方が良い。
このようにお考えください。
2 ルテニウムや銅を混ぜることによって、プラチナは硬くなる。
プラチナは柔らかい。
だから、ジュエリー業界の先人はプラチナの長所を残し、改善しました。
Pt1000はプラチナ100%を指します。
Pt950はプラチナが95%を指します。
それでは、Pt950の残りの5%に何を混ぜているのでしょうか?
【パラジウム・ルテニウム・銅】のどれか一つか二つを混ぜています。
例えば、Pt950(ルテニウム2%)という地金があります。
ルテニウムを2%混ぜることによって、プラチナがとても硬くなります。
硬い金属を使うと、指輪は曲がりにくくなります。
だから、鋳造(ちゅうぞう)で指輪を作る場合、現在、IZURUはPt950(ルテニウム2%)を使っています。
鍛造(たんぞう)では、銅を混ぜたPt950を使っています。
それぞれの素材に一長一短があり、作りたいジュエリーや工法によって金属を使い分けています。
金属が硬すぎると、製作時にトラブルが起きやすくなる。
2の補足です。
それでは、金属が硬ければ良いのか?
そんな単純な話ではありません。
より詳しく書くと、ルテニウムを3%に増やすと、硬すぎてジュエリーを作るのが難しくなります。
金属が硬すぎると、製作時にトラブルが起きる確率が高くなります。
詳しく書くと長くなりすぎるので、今回、この話は省きます。
最高の素材はありません。
良い指輪を作るため、常に私達は柔軟に考えています。
K18 ゴールドの耐久性について。
こちらも2の補足です。
昨年のデータを見ると、プラチナを選ぶ人が9割、ゴールドを選ぶ人が1割くらいです。
K24はゴールド100%を指します。
これはとても柔らかく、爪で押すと凹みます。
K18はゴールド75%を指します。
それでは、残りの25%に何を混ぜているのでしょうか?
IZURUは銀を15%、銅を10%混ぜたゴールドを使っています。
ゴールド 75%
シルバー 15%
銅 10%
ゴールドを硬くするために、銅が重要です。
10円玉を思い浮かべてください。
すごく硬いですよね。
10円玉は銅で作られています。
だから、銅を10%混ぜると、ゴールドはすごく硬くなります。
K18は良い素材なので、プラチナと同じくちゃんと設計すればトラブルは起きにくいです。
3 鍛造と鋳造、工法の違いによって結婚指輪の強度が決まる。
寸法と金属の硬さが同じならば、工法の違いによって結婚指輪の強度が決まります。
結婚指輪を作る工法は主に2種類、鍛造と鋳造です。
鍛造 たんぞう
鋳造 ちゅうぞう
比較すると、鍛造の結婚指輪の方が強いです。
そのためか、他のブランドで「鍛造は鋳造より優れている」という意見を見かけます。
私はこの意見に反対です。
鍛造と鋳造、それぞれに長所と短所があり、優劣はないと考えています。
ただ、手をハードに使うお仕事の場合は、鍛造で結婚指輪を作ることが多いです。
金属の硬さと同様、詳しく書くと長くなります。
工法の違いについては、他の記事で詳しく書きます。
盲点1 サイズが合っていないと、指輪が歪むことがある。
あまり知られていないことですが、大事なことを書きます。
指輪のサイズが緩い。
例えば、サイズが9号の方が11号の指輪を使っていると、指輪が歪んでしまうことがあります。
なぜでしょうか。
サイズが合っている場合、重いものを持った際、指が指輪を支えます。
サイズがブカブカだと、指が指輪を支えることができません。
だから、指輪は楕円形に歪もうとします。
盲点2 棒を強く握ると、指輪が歪むことがある。
棒など、何かを強く握ると、指輪が変形することがある。
これも多くの人が知らないと思います。
例えば、こんなシチュエーションを想像してください。
■ケース1
和太鼓の奏者が、結婚指輪を着けたまま演奏する。
奏者は太い木の棒を強く握っています。
継続的に指輪に力が加わります。
このようなとき、弱い結婚指輪はすぐに曲がります。
■ケース2
農家のお客様が、結婚指輪を着けたまま畑を耕す。
鍬など、農機具を強く握りしめているので、弱い結婚指輪はすぐに曲がります。
■ケース3
介護のお仕事のお客様が、結婚指輪を着けたまま力強く車椅子を動かす。
ハンドルを握りしめているので、弱い結婚指輪は曲がることがあります。
ジワーッと負荷が続くことに対して、指輪は弱い。
だから、何かを握るお仕事の方は、仕事中は結婚指輪を外した方が良いです。
手前味噌ですが、IZURUの鍛造(たんぞう)の結婚指輪は強いです。
今のところ、お客様が激しく使ってもトラブルの報告はありません。
ただ、結婚指輪は強度を最優先に考えなくても良いと思います。
お好きなデザインの結婚指輪が弱かったら、優しく大事に使う。
これも一つの考えです。
強度だけを考えると、戦車のようなゴツくて太い指輪になってしまいます。
物事は一長一短なので、「ほどほどが良い」とお考えください。
私の母親はすごく薄い、ペラペラの指輪を愛用しています。
工法は鋳造(ちゅうぞう)です。
ペラペラで鋳造の指輪なんて、太くて鍛造の指輪を使っている人からすれば、駄目な指輪かもしれません。
母は40年以上その指輪を使っています。
少し歪んでいますが、大きなトラブルもありません。
不思議だね、とよく話します。
指輪のサイズはピッタリと合い、指と指輪が一体になっているようです。
「なるほど、こんな風に指に合っていると、トラブルが起きる確率が低くなるのかな」
と感心しています。
細すぎる・薄すぎる結婚指輪は避けた方が良い。
この意見に変わりはありません。
ただ、母親の指輪を見ていると、例外もあるなと考えています。
あくまで一つの意見として、参考になれば幸いです。
まとめ
ペラペラの結婚指輪は変形しやすい。
だから、細すぎる・薄すぎる結婚指輪は避けた方が良い。
硬い金属を使うと、結婚指輪は曲がりにくくなる。
鍛造の結婚指輪は鋳造より強度があるが、強度だけで判断しない方が良い。
それぞれの工法に良い所がある。